ドイツの森の散歩道 2020〜

ドイツ生活はや10年以上。これまでのブログはexcite blog「ドイツの森の散歩道」

日本語クラスで実感する、生涯学習の難しさ

私の母は80歳を過ぎました。

年齢なりに不調や骨折、手術などは経てきたものの、幸い心身ともにしっかりしており、今もある文化系の趣味のサークルを月1−2回楽しんでいます。

その母が言いました。

『この間、地域の新聞を見てたら同じ趣味の別のサークルの募集が出ていたんだけど、年齢76歳までですって。私は今更新しいサークルに入るつもりはないけど、年寄りはこうやって年齢制限で締め出されていくのね、って何だか落ち込んじゃったわ』

 

 

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年齢制限つける理由もわからなくはないんですよ。やはり、年がいくほど頭の回転の個人差が出てくるだろうから、楽しむためのサークルで、モタモタしている人の面倒までは見られない、けれど面接でお断りするわけにもいかない。だから、その辺りで区切らせてもらいます、ってことなのでしょう。

 

実は、私も日本語クラスで難しさを感じています。

私が教えているのはVHSというドイツ全土にある公営の市民学校。授業料もリーズナブルで、留学などを目指すよりは、とりあえず何か初めてみよう、と地域の生徒が気軽に集まる感じです。

そのため、これまで3回開講した全くの初心者クラスには、若い人にまじって一人ずつリタイアした人が参加してきました。全て女性というのも興味深いところ。

60歳(65歳?)過ぎて新しい言語にチャレンジするだけあって、いずれも知的でヨーロッパ言語は2−3ヶ国語話せ、海外経験も豊富な方々。

なのですが。。。どうしても若い人とは吸収力に差が出る。ヨーロッパ言語とは全く違う語彙、発音、文法。みんな全くの初心者なので、頭を切り替えて学んでいけるか、なおさらその差が顕著なのです。

老後の趣味・チャレンジにわざわざ日本語を選んで応募してきてくれたことがとても嬉しく、なんとか楽しんでもらいたいのですが、進度につれて若い人と同じクラスで学ぶ難しさが増してきて。。。

多言語をマスターしてきた人たちなので、時間をかければ納得できるし、復習を混ぜればそれなりに応用もしていけるし、積極的に文を作り出して会話できる。でも、若年層が直線で行けるところをあっちこっち曲がったりぶつかったりしてようやく同じ場所に辿り着く、という状況になりがちなのです。そして本人たちも「自分がペースを乱してる」「若い人のように早く理解できない」と寂しく感じるようで、1−2ターム後に「これまで楽しかったけれど、今学期で終わりにします。ありがとう」ということになってしまうのです。

 

知的好奇心を絶やさず、新しいチャレンジを起こし、さらに世代間の交流があるのはとても素敵なこと。けれど、こういう現実を目の当たりにすると、まだ若くて吸収が早い世代と、好奇心や向上心が衰えずとも確実に老化はしている世代の人たちが同じ場所で活動するのは簡単ではないなあと正直思ってしまいます。

 

人生100年時代ですが、趣味もボランティア活動も「始めるなら退職後でなく退職前から齧っておくのがいい」と聞きます。母の趣味のサークルも、語学学習も、まさにその通り。物事の吸収力もそうですし、新しい場所に参加するのも年が行ってからでない方が適応しやすい。

 

語学の習得ペースで言えば、例えば「退職後から楽しむ日本語」というクラスなら引け目など感じずに安心して楽しめると思うのですが、それはそれでお年寄り(というには早いですが)だけ集めたり、若い世代と接する刺激を奪うことになります。

寿命が長くなっていく世界で、こういう活動において違う世代が混ざっての共生って難しい。

 

私もこのことを肝に銘じ、自分の老後を少しずつ見据えながら、やりたかったこと、趣味のことにはせめて早めに手をつけるよう心がけたいと思っています。