2004年出版でかなり前の本。
オマセな女子高生時代、人気女優として大活躍の頃にパリで豪遊、当時としてはスキャンダラスな未婚での出産と悲しい別れ、川端康成との交流、息子のような年頃の恋人、癌で逝ってしまった妻子ある恋人…小説のようにドラマチックな人生ですが、私が特に印象的だったのが
バイオリニストの前橋汀子さんとの友情です。
彼女は曲に対する解釈や技術を一つ一つ重ねていく演奏家。
方や直感や衝動を行動にしていく加賀まりこさん。
全くタイプが違いながらも惹かれ合い友情を結び、「泳げない事」が共通点だった2人が知人にコーチを頼んで水泳を習い始めたときのこと。
2人の習得アプローチの「違い」が浮き彫りになりました。
バタ足の特訓から始まったレッスン。
加賀まりこはひたすらバシャバシャやるのにすぐに飽きてビート板を持ちプールの中を目指す。
一方、汀子さんを見ると彼女は縁につかまって相変わらず基本動作を一生懸命に繰り返している。
加賀まりこはそんな彼女を見て
「なるほどそこが違うんだ。役者はすぐ様になるように形を真似て覚えていくけれど演奏家は基礎をみっちりやる。これはなりわいが作った癖みたいなものかも。案の定平泳ぎをすると私の方がスピードは速いが、手の掻き方やキックの正確さなどの基礎的な動きは彼女の方が正しく実についていた。」
世界的バイオリニストの前橋さんと我が身を比較するのは馬鹿げていますが、私も新しいことを学ぶ時は典型的な前橋さんタイプ。
子供の頃から高校3年生までピアノを習っていたわたしには、コツコツ練習を重ね、1曲仕上げる、というのはとても親しんだプロセスなのです。
昨年からオンラインでピアノレッスンを再開したのですが、最初はとても無理、と思っていたような曲でも、少しずつ少しずつ難しい部分を克服していき、何ヶ月かかけて1曲を仕上げる。そしていつの間にか通しですらすら弾けるようになり、自分の感情を乗せて工夫しながらメロディーを奏でる楽しみは「コツコツ積み重ね」をやり切った後にだけ味わえるもの…
この、「コツコツ」を続けるのが得意だからピアノが合っていたのか、ピアノのお陰で「コツコツ」が身についたのか… どちらが先なのでしょうか。私の学習スタイルは語学も、オフィスのITスキルも直感型でなく、200%コツコツ型。意外な人の本で、自分の「型」に気づかされました。